少女終末旅行
ニジュウタベテェ…
つくみずさん原作の少女終末旅行の連載がついに終わり、最終巻も発売されました。登場人物が、ほぼチトとユーリの2人という設定の中、物語を紡ぐというかなり難易度の高い作品だったと思うのですが、すごく好きな作品でした。なので、ちゃんと感想を書いてみようかなと思います。
この作品の世界は、絶滅戦争が起きて、ほぼ主人公以外の人が居なくなった世界でした。ですので、いわゆる物語をというより、絶滅戦争後の世界を淡々と体験させるような描かれ方をしています。面白かったのが、チトとユーリが我々にとっては常識として知っていることを知らない設定で旅していることで、廃墟、兵器といった絶望的な世界を新しい発見の連続として2人が体験する。なぜ、戦争なんかしたのか? なぜ、こんなに上に住もうとしたのか? なぜ、本を書いたのか? なぜ、宇宙を目指したのか? こういう疑問を投げかけることで、我々にとっては普段の生活で考えなくなっていたことを少し考えさせてくれました。
チトとユーリのキャラクタの違いも面白かったですね。チトは、理詰めで考えるタイプ、ユーリはとにかく走り出してしまうタイプ。2人の考え方が違うから、たった2人だけどちょっとした物語になっていたんですよね。大層なものではないけど、考え方が違う2人が議論することで、人には違いがあるけど、うまくやっていくこともできるんだよ、と言っているようでした。最終話は、作品の中で唯一そこらへんを踏み込んで描いていましたね。でも、そういった難しい描き方をするのはそこぐらいで、ほとんどの場面ではなにげない日常として描いていたのが、押し付けがましくなくて良かったです。
最上階にたどり着いたユーリとチトがつぶやく、『生きるのは最高だったよね…』『……うん』という言葉が、この作品を全て物語っていて、とっても感動しました。これは、映像化してほしいなあ。チトとユーリがその後どうなったのかは描かれませんでしたが、きっと幸せになったんだろうと思わせるシーンでした。
あと、面白かったのが、この作品のキャラクタの設定が、ソビエトの宇宙開発に関わった人物になっているところですね。ユーリは、人類で最初に宇宙に行ったユーリイ・ガガーリン、チトは、ガガーリンと最後まで最初の宇宙飛行士を争ったゲルマン・チトフ。あと、2人がおじいさんと呼んで、2人に上に行くように促した人物は、おそらく宇宙旅行の父、コンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・ツィオルコフスキーをモチーフにしているのでしょう。あのころも、冷戦というバックグラウンドはあったけども、宇宙に行くという情熱が上へ上へと突き動かしたわけで、2人はそれを別の形で追体験したわけですね。
それから、つくみずさんのあのシンプルな絵柄がまた良かったですよね。あの、ゆるい感じの線がすごく好きでした。次回作も期待してます。
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