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  • 2015/02/9
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apple, book

書評: ジョナサン・アイブ

20150209

『ジョナサン・アイブ』の本を読みました。

Appleの2大有名人といえば、Steve Jobsとこのジョナサン・アイブ。そんなAppleの顔であるアイブの姿を描いた本『ジョナサン・アイブ』を読みました。

この本は、ジョナサン・アイブの仕事ぶりが描かれますが、結局は彼の率いるAppleの中枢IDgについて描かれます。IDgはジョナサン・アイブが率いるインダストリアルデザイングループです。少数精鋭で、Apple内で最も秘密主義が徹底されているゾーン。そんなチームに切り込んでいるのがこの本です。

前半は、ジョナサン・アイブがAppleに入る前のストーリです。そこはそこでスーパースターらしいサクセスストーリーで面白いですが、やはりエキサイティングなのはAppleに移ってからのストーリ。ジョナサン・アイブが今の第2期Appleのデザインを一から構築したかと思っていたけど、アイブをAppleに引き入れたロバート・ブルーナーの功績が実はすごいんですねえ。そもそもIDgというグループをAppleの中枢として立ち上げ、デザインが製品にとってどれだけ重要か理解させたのがこの人なんですね。しかも、早い時期からアイブを誘い、6年間かかってようやくAppleに引っ張り込むという。ブルーナーが居なければ、Appleは今のように成功していなかったかもしれません。そんなブルーナーは、アイブと入れ替わりに退社して、つい最近までBeatsの製品デザインをしていたわけですが、そのBeatsをAppleが買収するという。残念ながらブルーナーはAppleに復帰はしませんでしたが。これはブルーナーが断ったんじゃないですかね。本の中でも結構派閥争いでもめている場面が描かれていたので、ブルーナーとしては愛弟子に余計な負担をかけたくないと。

アイブのデザイン哲学は、シンプルの一言につきますが、本を読むとそのこだわりが本当に深いものであることが分かります。とにかく削ぎ落とすことにチャレンジする。それは、単に見た目という観点ではなく、製造という観点も入っている。どうやったら、このシンプルな継ぎ目のない構造にできるか。そんなところまで考え尽くした結果あのデザインができてるんですね。普通にコスト重視だとあのアイブが求めるデザインは実現不可能で、かと言ってコスト度外視できるわけでもないので、製造プロセスまで徹底的にデザインするんですね。これがインダストリアルデザインってやつなんですね。いや、ちょっと感動的。

最初のiPhoneで案として出されていたものがiPhone4で復活するという話も面白い。あのサンドイッチ型の造形です。あれは、元々は初代iPhoneの時から案にあったけど、当時の実装技術が未熟なのででかくなってしまいうまくいかなかった。それを実装技術が進んだ段階で復活させて再チャレンジ。見事にモノにします。こういうあきらめない、時代にあったデザインをタイムリに送り出す現実性のバランスが秀逸です。

アイブの人柄は、わりと大人しく、紳士的、チームへの思いやりが強い、とてもいい人みたいです。チームはほぼ秘密で顔出しが基本されませんが、表彰などを受けたときはアイブは必ずチームの成果だということをスピーチで言い、チームを祝福しているのだそうです。確かに、ビデオなんかで登場するキャラクタ見てもそんな感じしますね。

Jobsが居なくなった後、間髪入れずソフトウェアも含む全体デザイン統括に据えたティム・クックの判断は的確でしたね。製品デザインについてJobsが口出ししまくっていたのであるべき姿が見いだせていましたが、Jobsが居ない今Jobsの側に最も居て製品の方向性を一緒に決めていたアイブを明確にデザインのトップとしてアピールする。これは、外部に対する安心感もありますが、どちらかというと内部のチームに対する安心感でもあります。これから誰を頼りにデザインを決めればいいのか、そんな不安を払拭する意味もあるのでしょう。

そういう意味で、クック時代のAppleはJobsとは違う方法で、Jobs以上の成果を出そうとしているように感じます。Jobsのような安心感はないけれど、複数の天才で協力してJobsが一人でやってきた偉業を超えるものを作ろうとしているような期待を感じます。その中枢には確実にアイブが居て、彼がAppleの行く末を握っていることは確実です。


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