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  • 2013/12/22
  • 0
movie

3D映像に一つの答えを示した映画『ゼロ・グラビティ』

20131221

ゼロ・グラビティを観に行きました。
他の映画で予告編を観た時から気になっていた作品です。
この映画は、3D作品なのですが、これまでの3D作品とは明らかに異なる演出として3Dを利用していて、ようやく3Dであることが必要だったと感じさせる作品が出たと感じました。
以下、ネタバレを含みます。

ゼロ・グラビティの舞台はほぼ全編宇宙です。
しかも、ほとんどが宇宙船の中ではなく宇宙遊泳状態。
何もない広大な空間、無重力をどう表現するか、どう感じさせるかというのを考えぬいた演出がされていて、凄まじい没入感が出ていました。
広大な空間を表現するためシーンをカットせず撮り続けるいわゆる長回しが使われています。
カットされない状態で人が動き回ると、空間を強烈に感じさせます。
そして、3Dもこれに貢献しています。
つまり、奥行き方向にも撮られているので、3次元の空間を認識させるのです。
これは、派手なシーンより、キャラクタが一人でいるシーンの方が効果的に効いていましたね。
宇宙ステーションが爆発したりする派手なシーンもあるのですが、最も3Dの効果を感じたのは主人公が一人漂流して地球をバックに徐々にカメラから離れるシーン。
手前から奥にスーッと主人公が流されていくのですが、これが凄まじい緊張感を出していてちょっと恐怖感出る体験。
3Dをこういう使い方した映画はこれまでなかった。
最初、主人公の主観視点で見てる人間にキャラクタの心理的な状況を感じさせて、視点を徐々に離すことで客観的視点にどれだけ絶望的な状態かを認識させる。
いや、ホントよく考えられています。
あと、主人公は作業船、宇宙ステーション、別の宇宙ステーション、と作中なんども宇宙空間を移動します。
この移動のシーンの没入感もすごい。
これは、今までの3D作品が飛び出させることに躍起になっていたのに対して、この作品では吸い込むことにフォーカスしていることの違いから生まれている気がします。
上にも書いた主人公が奥に流されるシーンもそうですが、奥に向かう表現に3Dを使っているのです。
宇宙空間を移動する時は、主人公の一人称視点が多様されていて、主人公が目標に向けて吸い込まれる感じが3D表現によって凄まじいリアリティを生んでいます。
この『奥行き』を認識させる演出は今後真似する作品がたくさん出ると思います。

無重力に関しては、回転の表現で際立たせられています。
主人公は、作中何度も回転します。
最初に漂流するときもクルクル回りながらパニックになりますし、二人がワイヤーでつながって移動するときも、ちょっと方向転換すると回転。
重力、抵抗が全くないのでこうなるわけですが、この演出が本当に怖い。
完全なリアリティを求めているんじゃなくて、地上と宇宙の違いを認識させるために適度に、うそ臭く見えないように誇張して演出している絶妙な調整がすごい。

あと、音が演出になくてはならない役割を果たしています。
作中にはいくつか派手派手なシーンもあるのですが、音は抑えめになっているシーンがあります。
これは、空気がないので音がそもそも伝わらないので実際聞こえないんだと思います。
ただ、映像として見ると違和感からこれも地上との違いを強烈に感じさせます。
他にも音の使い方うまいなあ、と思わせるシーンがちらほら。
海に沈むポッドから脱出するシーンとか。
あと、音楽も漂流中はあえて無音にして不安感を煽ったり、音楽が付く場面でも不安感を感じるちょっと不協和音的な曲が多かったり。
この辺は、2001年宇宙の旅なんかに通じるものを感じました。

最後に登場する人物。
全編で登場する人物はほぼサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーのみ。
これは、この映画が宇宙空間というものを描くことにフォーカスし、無駄なものを完全に排除した結果だと思います。
ここで、よくある映画みたいにたくさんキャラが出てきて死んでいくとかだったらテーマを完全にぼやけさせてしまう。
この辺、周りからすごい抵抗受けただろうけど、よく監督耐えたなあと思います。

まとめ

本作は、とにかく3D作品として新しい世界を作った作品と思います。
なので、絶対3D版を観ましょう。
できればIMAX3Dで観ましょう。
2200円の価値はあります。
また、この作品はTVで見ると作品性の半分以上失ってしまうので、ぜひ今のうちに映画館で観ましょう。
上にも書きましたが『奥』に向かう力を感じさせる演出として3Dを使っている点がこれまでと違う点だと思います。
どうしてもこれまでは、物体を手前に飛び出させる演出に3Dが使われていましたが、じつは奥に吸い込む方が効果的に伝わることを発見したのが勝因。
ストーリはほぼないと思って観たほうがいいですが、映像、演出だけで満足できます。
ここ数年、ここまで上映中に集中して観た作品はなかったなあ。
素晴らしい。

あと、見終わった後に以下のスピンオフ作品を観ましょう。
ちょっとした感動があります。
Aningaaq http://www.youtube.com/watch?v=MWibI__1IRk

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