harmony
ひたすら続く鬱世界。
Project Itoh 第二弾『harmony』を観てきました。本来は第三弾になるはずだった今作ですが、虐殺器官を製作していたマングローブが破産してしまったので、再製作になり急遽今作が繰り上がったというわけです。早く公開されたからといって未完成とかそういうことは一切なく、映像的にも非常にクオリティが高い作品でした。
伊藤計劃の真骨頂ともいうべきユートピアの中で起こる死。作品中何度も登場する自殺のシーンがこの作品の異常性を物語っています。この作品では、病気から老いまで克服してしまった世界、いわゆるユートピアが舞台ですが、それと引き換えに全ての生体情報は政府に管理されリアルタイムに監視される世界。そんな世界を息苦しく感じる主人公たちのそれぞれの物語が描かれます。
作中常に死がそばにある物語で、とてもお子様には見せられないストーリーと表現です。しかし、なんともこれから起こりそうなリアリティを感じてしまうのはなぜでしょう。医療がここまで発達するのは相当先ですが、監視社会はもうすぐそこにあって、安全と引き換えにずっと見られている。そんな世界を息苦しく感じるのは、特に多感な子供時代には十分あり得る状況です。そこから逃れる方法として、今作では死が使われるのですが、現代の状況からしてもありえそうな世界。伊藤計劃は、現代を見て紙一重の世界としてこの世界を描いたのではないでしょうか。
ストーリーはかなり難解というか結末が難解で、万人向けという感じではない作品です。ただ、映像的にとても神秘的で危うい世界を見事に表現していて、映像を見に行くだけでも価値があるかもしれません。あと、主人公の一人ミァハの声がすごい合っていて、なんとも危うげで淫靡な声があのキャラクタにぴったりです。あまり大きな役は演じていなかった上田麗奈さんですが、今回の演技で大躍進ではないでしょうか。なかなか独特な演技でした。
2時間の中に非常に高密度にストーリーが詰め込まれているため、結構疲れる作品ですが、いろいろ考えさせてくれる作品です。伊藤計劃らしいと言えばそれまでですが、彼だからこそ描けた世界かもしれません。
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